残念ながらお薬でのあらゆる治療を行っても完治せず、根治には手術が必要な病気があります。
いながきクリニックでは経験豊富な2名の外科系の専門医(耳鼻咽喉科専門医・外科専門医・乳腺外科専門医)が在籍するクリニックとして、みみ・はなの日帰り手術に対応可能な「豊橋サージクリニック」を併設して、手術なしでは根治ができない「聞こえにくい」「鼻づまり」といったみみ・はなの病気に対応しています。
特に、耳の疾患では三河地区では唯一の「耳科手術指導医」が、最新の内視鏡設備・大学病院での多数の手術経験・技術を生かし、患者さんの負担が少ない低侵襲手術で完治を目指します。「手術が必要と言われているけれど、仕事や家事・育児のために入院はちょっと・・・」「治るかどうか不安・・・」などみみ・はなの手術にまつわる悩みもご相談ください。
日帰り手術
手術法というのは時代とともに移り変わります。特に内視鏡の装置や手術器具の進歩によって、小さな傷で効果のある手術が出来るようになり、手術によっては体の負担がとても軽くなっています。
「日帰り手術」というのは「 “手術室”で行う手術のうち、術後に入院を予定していない手術」(Uziel, 2017)で、体の負担が軽い手術を外来で行う方法です。
海外では手術の後に入院する方が珍しいという国が多く、医療水準が日本と同じで同じような手術を行っているいわゆる先進国では、外科手術のうちアメリカでは83%、イギリスでは79%、北欧諸国では70%が「日帰り手術」として行われていて、術後に入院することが少なくなっています(Uziel, 2017)。
「みみ」「はな」の日帰り手術
耳鼻いんこう科の手術は、比較的体の負担が少なく、日帰り手術で行われることが多い手術です。特に「はな」の手術のうち、鼻づまりの手術や副鼻腔(ちくのう)の手術は「日帰り手術」として広く行われています。海外の例になりますが、2006年にアメリカで行われた調査では、34万件の鼻づまり手術(下鼻甲介手術)、26万件の副鼻腔炎手術のうち、それぞれ入院したのは100人中わずか1人、3人(それぞれ)のみで(Heilbronn et al, 2020)、2015年のイギリスの調査では鼻づまりの手術(鼻中隔湾曲症矯正術)では88%、副鼻腔炎(ちくのう)の内視鏡手術では87%が日帰り手術として行われています(Marshall, 2019)。国内でも東京や京都、大阪など大都市圏には日帰り手術を手掛けるクリニックがいくつもあり、入院の時間が取れない方の選択肢となっています。
体の負担の軽い耳の手術はさらに「日帰り手術」に向いていると考えられています(Bonnafous et al, 2020)。実際に多くの耳の手術が「日帰り手術」として行われていて、入院で行う手術と合併症や効果の点で差がないとされています(Bonnafous et al, 2020; Dickins, 1986; Jelicic et al, 2017)。特に、最近、耳の手術にも小型の内視鏡による手術ができるようになり、より、体の負担がますます小さくなっています。当クリニックの医師は耳の内視鏡手術にも多数の経験があり、耳の内視鏡手術にも対応しています。
「身近なサージクリニックに」
大都市の専門病院では、手術や受診の曜日が決められていたりして、自分の都合ではなかなか受診ができず、また、手術が受けられないことがしばしばです。
手術は受けたいけれど、「仕事が忙しくてあまり休めない」「こどもの送り迎えや家事で忙しい」といった方にもできるだけ無理なく手術を予定していただけるように、月曜日から金曜日まで毎日手術ができる体制を整えています。
また、少し体の負担があるような手術でも、木曜日の午前中に手術を行い夕方までクリニックで経過を観察することで、安心して手術を受けていただけるように配慮をしています。毎日手術に対応することで、緊急性の高い病気でもすばやい対応を目指しています。
また、特に「みみ」「はな」の手術では、その多くが手術によって「みみ」「はな」の“形“を”調節“して完治をめざす手術です。そのため、創部が落ち着きその“形”が安定するまで術後の治療を続けることも大切です。「身近なクリニックに」を合言葉に誕生した当クリニックは、術後も手術を担当する医師が月曜日から土曜日まで毎日診療を行っておりますので、ちょっとした異変にも遠くの医療機関を受診することなく、手術を担当した医師の診察をご都合に合わせて予定して頂くことができます。
「日帰り手術」には注意点もあります
日帰り手術はすべての方にお受けいただくことができません。例えば、鼻の手術の後に一時的に鼻での呼吸がしづらくなります。
そのため、口で呼吸の難しい重度の“睡眠時無呼吸症候群”で睡眠の際、呼吸を補助する装置(CPAP)をご使用の方には、鼻の「日帰り手術」をお受けいただくことが出来ません。
その他にも、「日帰り手術」にはお体の調子による制限があります。詳しくはクリニックまでご相談下さい。
Q&A
入院での手術と日帰りの手術とは違う手術ですか?
手術の方法は、通常、長い年月をかけて改良されたもので、ほとんどの場合には決まった方法があります(術式といいます)。日帰り手術は、このうち日帰り手術で行える手術のみを行いますので、手術の方法は入院のそれとかわりません。「みみ」や「はな」の手術は耳・鼻の内視鏡を用いた低侵襲手術の普及で、日帰りでの手術で対応できる場合が多くなっています。
手術設備はどのようなものですか?
内視鏡設備はオリンパス社の最新の4K内視鏡を導入しています。4Kというのは最近放送が始まった4Kテレビと同じ「4K」で、画質の細かさを表していて、標準的な内視鏡と比べて画質が4倍細かくなっています。通常の画質の内視鏡でも手術は可能で、現に大学病院を含めて多くの病院では標準的な内視鏡を用いて手術を行っております。
当院では、より細かい画像を見ながら手術が可能となることで、より細かく、より安全な操作が可能となります(参考1)。また、手術用のドリル・マイクロデブリッダーにはアメリカ、メドトロニック社製の製品を導入しています。これらは、名古屋の大学病院でも使用されています。
顕微鏡はドイツ、ツァイス社の顕微鏡を導入しており、また、短い時間で血圧測定(日本光電)が可能な最新の生体情報モニタの他、スタッフ全員で状態を確認できる大型の生体情報・術野モニタなども設置して、2名の外科系専門医よって、安全に手術が行えるよう配慮しています。
医師の実績はどうでしょうか?
手術を担当する医師は長く名古屋市の大学病院に勤務した耳鼻咽喉科の専門医で、「耳」「鼻」の手術治療に数多く携わってきました(担当医師の紹介)。
特に耳の手術については、三河地区では唯一、耳の手術の指導医資格(暫定耳科手術指導医)を持つほか、学会での手術のセミナー講師、手術実技講習会のインストラクターとして、耳鼻咽喉科の医師の指導を行っています。
愛知県下で内視鏡を用いた鼓室形成手術を実施する病院は多くはありませんが、小児例を含め、多くの内視鏡下鼓室形成手術の実績があります。
(参考1)
オリンパス内視鏡 NBIなど
(参考2)
愛知県内で慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎、また、顔面神経麻痺で手術を受けられた最新の患者さんの人数を示します。(2021年3月現在の最新データ、2018年度分、DPCによる集計数)です。
名古屋市立大学病院の手術は、すべて当クリニックの医師が執刀しております。
鼓室形成手術
病院名 | 鼓室形成手術 患者数 |
---|---|
愛知医科大学病院 | 96 |
名古屋市立大学病院 | 62 |
名古屋大学医学部附属病院 | 53 |
名古屋第一赤十字病院 | 52 |
一宮市立市民病院 | 37 |
名古屋市立東部医療センター | 22 |
一宮西病院 | 21 |
医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 |
20 |
独立行政法人労働者 健康安全機構 中部労災病院 |
16 |
愛知県厚生農業協同組合 連合会安城更生病院 |
15 |
鼓膜形成手術
病院名 | 鼓室形成手術 患者数 |
---|---|
名古屋第一赤十字病院 | 14 |
名古屋市立大学病院 | 13 |
小牧市民病院 | 10 |
顔面神経障害手術
病院名 | 鼓室形成手術 患者数 |
---|---|
名古屋市立大学病院 | 28 |
藤田医科大学病院 | 22 |
愛知医科大学病院 | 21 |
名古屋市立東部医療センター | 20 |
総合青山病院 | 15 |
名古屋大学医学部附属病院 | 13 |
藤田医科大学ばんたね病院 | 12 |
Bonnafous S, Hermann R, Zaouche S, Tringali S, Fieux M (2020). Evolution and safety of day-case major ear surgery. European Annals of Otorhinolaryngology, Head and Neck Diseases.
Dickins JR (1986). Comparative study of otologic surgery in outpatient and hospital settings. The Laryngoscope 96: 774-785.
Heilbronn C, Lin H, Bhattacharyya N (2020). Adult ambulatory otologic surgery: Unplanned revisits and complications. The Laryngoscope 130: 1788-1791.
Jelicic T, Savage JR, Aron M (2017). Is hospitalization necessary after ear surgery? A national survey and retrospective review of postoperative events. Otolaryngology–Head and Neck Surgery 157: 707-715.
Marshall A (2019). Ear, Nose and Throat Surgery
GIRFT Programme National Specialty Report.
Uziel A (2017). Day-case otological surgery. European annals of otorhinolaryngology, head and neck diseases 134: 249-251.